東山旧岸邸は、2019年11月に開館10周年を迎えた事から展示「吉田五十八の建築~設計者と作り手たち~」を2019年11月20日(水)から2020年1月26日(日)の54日間開催し、計4,491名のお客様にお越しいただきました。
本企画は株式会社 水澤工務店様ご協力のもと、貴重な資料や書籍及び大工道具等の借用が叶いました。また会期中、数度にわたり室礼を特別に整えて頂きましたのは「美遊居・きたがわ」様、長谷川瀟々流 吉原 佩花様のご協力によるものです。
会期中は、藤森 照信×田野倉 徹也『吉田五十八の仕事』、水澤工務店代表取締役×水澤工務店棟梁『水澤工務店の仕事』の2つのトークイベントを開催しました。
また、通常非公開の2階特別公開(12/7~15の9日間)や、担当学芸員によるガイドツアー(期間中4回)も開催し、多くのお客様にお楽しみいただきました。
展示、およびイベントの様子をご紹介します。
岸邸初の試みとして、邸内数ヵ所にプロジェクター投影を行いました。
これにより、建物を傷つけずに該当場所での詳しい説明が可能になりました。
下の写真はコート室で投影されたキャプションをのぞき込む様子です。
朝から夕方まで滞在される吉田五十八ファンの方、建築関係の方や学生さんなど、熱心に建物の細部をご覧になられる方も多くおりました。
各部屋にはその部屋の図面を配置し自由にご覧頂きました。
全体の展示空間は文章パネルや体験コーナーなどを用意した場所と、室礼を整え吉田五十八の建築美を存分に味わいつつ、くつろいで頂ける場所とに分けてご紹介しました。
また、吉田五十八著『饒舌抄』より抜粋した吉田の言葉を邸内各所に展示し、自由に読んで頂きました。
【厨房・女中室】
・水澤工務店本社 作業場の様子写真
・鉋の削り屑に触れるコーナー、鉋削り場面の動画
・岸邸で使われている建築技法及び吉田五十八の建築特徴についてのパネル紹介 など
■室礼 「美遊居・きたがわ」(東京上野 池之端)
映画監督小津安二郎の美術担当であり、横山大観など文化人が度々訪れた美術商「貴多川(きたがわ)」(吉田五十八設計/赤坂・現存せず)の後を継ぐ「美遊居・きたがわ」の主人、北川景貴様に節季ごと室礼を替えながら吉田五十八の美意識を引き出す空間を整えて頂きました。美術品の中には奥村土牛作の富士山の絵や、安田靫彦作のチューリップの絵も飾られキャプションは出さず間近でご覧頂きました。
写真は殿村藍田筆のお軸や、八塔亭二寧作の笹雪図手鉢などをご紹介いたします。
■いけばな 長谷川瀟々(しょうしょう)流 吉原 佩花(よしはら はいか)
「貴多川」で当時花いけを担当していた師匠のもとで40年間、直接いけばなを学ぶ。
岸邸庭園や近隣より頂いた椿なども使い、毎回見ごたえのあるお花を活けて頂きました。
■展示室
・水澤工務店創業者 水澤文次郎と吉田五十八のあゆみを紹介
・水澤工務店棟梁の道具の展示
・当時を知る吉田五十八秘書の回想 など
展示室では大工道具の使い方を孫に教えるおじいさんの姿や、メモを取る学生の姿を見ることもありました。
■書斎
・水澤工務店本社の書庫の様子を書斎棚に写真パネルで再現
・水澤工務店現役棟梁へのインタビュー
・木材の違いに触れる体験 など
水澤工務店から借用した一部の書籍は自由に読んでいただけるスペースを用意しました。
本棚の本が写真と気付かないまま去られる方も多くいたようです。
そのほか、以下のトークイベントを開催しました。
■藤森 照信(建築史家・建築家)×田野倉 徹也(数寄屋建築家)トークイベント
11月26日、休館日の東山旧岸邸で居間と食堂を会場に「吉田五十八の建築」をテーマのもと、2時間ほど笑いの起こるトークが繰り広げられました。
参加者には、吉田五十八の顔の焼き印が入ったとらや工房特製どら焼きが振舞われました。
焼き印のイラストは東山旧岸邸・とらや工房パンフレットのイラストを担当して頂いた、ほしよりこさんによるものです。
■水澤 孝彦(水澤工務店 代表取締役)×壺屋 健二(水澤工務店 棟梁)トークイベント
2020年1月13日(月・祝)、参加者多数の為、会場を変更し駐車場すぐ横にある東山区公民館をお借りし開催しました。
前半は社長より水澤工務店の仕事のほか、貴重な写真や資料と共に吉田五十八の仕事や人柄について約1時間ほどお話いただきました。
一度休憩を入れた後、壺屋棟梁より水澤工務店でのお仕事や道具についてお話頂きました。
また、会場に設置されたセットを使い壺屋棟梁に鉋削りを実演頂くと、多くの方がカメラを片手に見守っていました。
イベント終了後にはほぼ全ての参加者も鉋削りを体験し、お子様から大人までいる会場は和やかな雰囲気となりました。
また、このイベントでも吉田五十八焼き印の入ったとらや工房のどら焼きをお土産にお渡ししました。
本企画にご協力頂きました、株式会社 水澤工務店様、北川 景貴様、長谷川瀟々流 吉原 佩花様、
藤森 照信様、田野倉徹也様、そして展示デザインを担当して頂いた杉本光俊様、貴重なお話をいただいた髙野栄造様、躰中ヌイ様に心より御礼申しあげます。
そして、ご来館頂きましたすべての皆様に感謝申しあげます。