この度は、「俳句募集―岸邸の四季を詠む」へご応募いただき誠にありがとう
ございました。
2月28日に募集を締めきり、選考させていただきました結果、最優秀賞1点、
優秀賞2点、また奨励賞を15点、こども賞3点を決定いたしました。
受賞作品および、甲斐遊糸先生によるご講評をご覧ください。
受賞作品につきましては、今年の秋から冬にかけて、東山旧岸邸にて展示の
予定です。展示期間などは現在未定ですが、決定次第当ホームページに情報を
掲載いたします。
今回、多くのご応募をいただきましたことに心より御礼申し上げます。
■最優秀賞
外は雪日記帳にも雪とあり 北原 幸子(静岡市駿河区)
■優秀賞
邸宅の静けさやぶる里神楽 小野 誠一 (御殿場市東山)
岸邸に木の芽立つ音聴く日かな 望月 秀子 (静岡市葵区)
●選後評 甲斐 遊糸
外は雪日記帳にも雪とあり 北原 幸子
岸信介元首相は、こまめに日記をつけていたという。その日記帳が、邸内に
展示されていた。作者は、天候の欄に「雪」という字を見つけた。折から、外も雪。
元総理への親近感が、作者の心に一挙に芽生えたに違いない。
邸宅の静けさやぶる里神楽 小野 誠一
宮中で催される「御神楽」に対し、宮中以外の神社などで行う神楽を「里神楽」という。
共に冬の季語である。岸邸があり作者の住む御殿場市東山区には、百五十年も続く
神楽の舞があると聞く。作者は幼いころから親しんできたのだろう。在りし日の岸さんも、
この日を楽しみにしていたのではなかろうか。
岸邸に木の芽立つ音聴く日かな 望月 秀子
「木の芽立つ」という場合、通常は目で確認する。それを「音聴く」と表現。作者には
はっきりと、芽立ちの音が聴こえたのだ。だから、詩になった。一樹だけではなかろう。
たくさんの樹木が、明るい春の陽射しを浴びて、いっせいに産声をあげている。
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■奨励賞
天井に日の斑の遊ぶ冬館 山本 浪子 (川崎市麻生区)
庭園の紅葉かつ散るコンサート 坂上 美果 (駿東郡長泉町)
岸邸の落葉沈むやビオトープ 三輪 佐知子(御殿場市萩原)
岸邸の系図に見惚れ寒日和 平井 小枝子(藤枝市)
をちこちに風の私語めき冬木の芽 吾 亦 紅 (大分県国東市)
寒明の柾目正しき廊下かな 新井 博子 (裾野市)
胸広げ頂く今日の冬日和 豊田 修二 (富士市)
主人(あるじ)亡き住処をたたく落葉かな 大田 壽雄 (御殿場市東田中)
秋風や奏者は大き木の下に 武田 和代 (山梨県南部町)
ありし日を想ふ静かな雪の庭 内田 秀子 (御殿場市御殿場)
赤富士に真向かひ刻を惜しみけり 髙杉 光昭 (静岡市葵区)
松飾り館門扉を開け放ち 勝又 昭雄 (御殿場市萩原)
下萌えはゆるゆると土ほぐし来し 衞藤 能子 (東京都豊島区)
桟一つに五十八の心冬ぬくし 比嘉 師代 (御殿場市川島田)
臘梅やパノラマのごと押込み戸 勝又 芳子 (御殿場市新橋)
■こども賞
キラキラとゆきはかがやくほしのみち 橋口 莉奈 (小3・京都市上京区)
さむいあさしろいわたあめおいしそう 橋口 聡 (3才・京都市上京区)
もみじはねこうようするとまっかだな 柴田 涼平(小1・御殿場市神山平)
※奨励賞、こども賞の講評は下記をクリックしてご覧ください。
奨励賞、こども賞
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●選者詠 甲斐 遊糸
主なき大き地球儀開戦日
庭に向くソファー落葉の降り止まず
岸信介自筆の軸や冬座敷
竜の玉巨魁とよばれたる男
千巻の写経納めて日向ぼこ